独立してから、請求書を出すたびに小さく引っかかることがあります。「インボイス、どうしてますか」。取引先からそう聞かれて、うまく答えられなかった経験がある人は、私だけではないと思います。
会社員のときは、消費税なんて給料明細に出てこない話でした。独立して初めて、自分が「課税事業者」なのか「免税事業者」なのか、その違いで何が変わるのかを、自分ごととして考えることになります。
私は営業を27年やったあと、40代で会社を辞めて、いまはフリーランスの採用コンサルタントとして独立して1年ほどになります。正直に言うと、受注はまだ1件だけです。売上も小さい。だからこそ「インボイス登録なんて、自分にはまだ関係ない話じゃないか」と思っていた時期がありました。でも、調べてみると、売上が小さいからこそ考えておくべき話だとわかりました。今回は、その「調べてわかったこと」を整理してお伝えします。
インボイス制度で40代フリーランスが引っかかる本質
インボイス制度の一番やっかいなところは、「登録するかどうかは自分で選べるのに、選ばないと取引先に迷惑がかかるかもしれない」という、板挟みの構造にあります。
制度の建て付けはシンプルです。売上が1000万円以下なら、これまでどおり消費税を納めなくてよい「免税事業者」でいられます。ただし免税事業者のままだと、インボイス(適格請求書)を発行できません。取引先が仕入税額控除を使えなくなるため、場合によっては「インボイス登録している人にお願いしたい」と言われることがあります。
「稼げていないから関係ない」ではなく、「稼げていないからこそ、どちらを選ぶか自分で決めておく必要がある」というのが実際のところです。
40代フリーランスがインボイスで迷う原因は3つ
原因1:制度の説明が「事業者向け」すぎて、自分の売上規模で何が起きるか見えない
インボイスの解説記事の多くは、ある程度の売上がある事業者を想定しています。私のように受注が1件、月の売上が数万円という規模だと、「結局、自分は登録すべきなのか」がなかなか判断できません。
原因2:「取引先に嫌がられるかもしれない」という不安が先に立つ
免税事業者のままだと、取引先の税負担が増える可能性があります。角が立つのが怖くて、聞かれる前から不安になってしまう。これは私自身、何度も感じたことです。
原因3:消費税の申告という、確定申告よりもう一段面倒な作業が増える
インボイス登録をして課税事業者になると、所得税の確定申告に加えて、消費税の申告と納税も必要になります。ただでさえ独立1年目は確定申告だけで手一杯なのに、その上さらに事務作業が増えると考えると、腰が引けてしまうのも当然だと思います。
免税のままか、登録するか。判断のための考え方
結論から言うと、「今の取引先が誰か」で考えるのが一番現実的です。
取引先が法人で、消費税の仕入税額控除を重視する規模の会社なら、インボイス登録を求められる可能性が高くなります。逆に、取引先が個人や、免税事業者との取引でも困らない小規模事業者なら、当面は免税事業者のままでも実務上の支障は小さいというのが、調べてわかったことです。
売上がまだ小さいうちは、消費税の申告という事務負担が増えるデメリットのほうが、目先は大きく感じられるかもしれません。ただ、取引先を増やしていく計画があるなら、早めに登録して「インボイス対応済み」にしておくほうが、営業のハードルが一つ減るという考え方もあります。
「今すぐ決めなきゃ」ではなく、「今の取引先の顔ぶれで、いったん決めておく」くらいの気持ちでいいと思います。
判断に迷う場合は、税務署や税理士に確認するのが一番確実です。国税庁のインボイス制度特設サイトには、登録要否をシミュレーションできる資料も公開されています。
見落とせないタイミング:2026年10月で控除率が変わる
もうひとつ、調べていて「これは知っておかないとまずい」と思ったのが、経過措置の期限です。
インボイスを発行できない免税事業者からの仕入れでも、取引先が一定割合を仕入税額控除できる経過措置があります。2023年10月から2026年9月末までは80%控除、2026年10月から2029年9月末までは50%控除に下がる、という2段階の仕組みです。
つまり、この記事を書いている2026年7月時点は、ちょうど「80%控除の最後の期間」にあたります。10月以降は取引先の控除できる割合が下がるため、免税事業者のままの自分に対して、取引先の見る目が今よりシビアになる可能性があります。今すぐ結論を出す必要はありませんが、「そろそろ本気で考えるタイミングが近づいている」ことは、頭の片隅に置いておいたほうがいいと思います。
今日からできる具体的なアクション
- 今の取引先(またはこれから営業したい相手)が法人中心か個人中心かを、紙に書き出してみる
- 取引先から「インボイスはどうしてますか」と聞かれたときの答え方を、あらかじめ一言決めておく(免税事業者なら「現在は免税事業者として活動しています」で十分です)
- 判断に迷ったら、税務署の相談窓口か税理士に一度相談する(自己判断で放置しない)
- 確定申告の基本がまだ不安な人は、先に土台を固めておく(フリーランスの確定申告がわからない人へ|独立1年目の私の場合で私自身の1年目の記録をまとめています)
まとめ:小さな売上のうちに、自分の答えを持っておく
インボイス制度は、売上が大きい人だけの話ではありません。むしろ私のように受注がまだ少ないうちのほうが、慌てずに自分の考えを整理する時間があります。
独立してからは、税金や制度まわりの「知らなかった」が、そのまま資金繰りの不安につながることがあります。実際、私自身も独立後は入金のタイミングで冷や汗をかいたことが何度もありました。そのあたりの現実はフリーランス資金繰りが苦しい時の対処法|先払いサービス比較にまとめていますので、あわせて読んでみてください。
制度に振り回されるのではなく、自分の取引先と売上の実態から、いったんの答えを持っておく。それだけで、次に取引先から聞かれたときの心構えが変わってきます。
毎日の気づきはnote(https://note.com/charm_phlox2885)とInstagram(https://www.instagram.com/otto_3988/)でも発信しています。


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